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リールに使われている樹脂 [メーカーが語る"Alchemy Reel"の秘密]


The Alchemy Model 44 Reel & Jim Hidy 7'6" #3 3P

金属ブロックから削り出された英国系リールにはほとんど縁のない話なんですが、米国では19世紀半ばから樹脂プレートを使用した両軸受けタイプのリールが製作されていました。その原型は真鍮もしくはニッケルシルバー(米国の書籍ではジャーマンシルバーと表記されることが多いですが、同じ素材です)を材料にした両軸受けリールです。

真鍮もニッケルシルバーも重い金属ですので、それを素材としたリールは必然的に重たいわけで、当時のリール制作者にとって少しでも軽くすることが最大の目標のひとつでした。穴を開けて軽量化するという考え方は薄い金属板をプレスで打ち抜いて作られた普及品では見られましたが、高価格品においてはまだ一般的ではなく、従来の金属より軽い素材を使用することが解決策でした。ここからリール進化の流れが英国と米国では大きく変わってきます。

当時、世界で最も工業テクノロジーが進んでいた英国では最新の金属素材であった軽量かつ高剛性なアルミが使われ始めました。
ところが産業後進国であった米国ではアルミは手に入りづらく、もっと簡単に軽量化できる方法を考えざるを得なくなり、当時発明されたばかりの樹脂が使われ始めたのです。その樹脂こそ、かの有名なハードラバーでした。

サイドプレートが黒い両軸受けリールにはハードラバーが使われている。
と、漠然と思われている方は多いと思います。
でも、簡単にそういうわけじゃないのが面白いところです。
1930年代半ば以前のリールでサイドプレートに樹脂が使われているものは、ほとんどハードラバーが使用されています。
30年代末以降になると、高価格のリールにはハードラバーが依然使われていたのですが、低価格のリールにはベークライトという合成樹脂が多用されるようになり、その風潮は50年代頃まで続きます。
ここでベークライトは合成樹脂と書きましたが、ハードラバーは樹脂としか書いていません。
それじゃハードラバーっていったい何なんだ?
と、疑問を持たれた方がいらっしゃると思います。
ハードラバーは天然素材から作られた硬質ゴムで、その素材はゴムの木の樹液である天然生ゴムと硫黄です。
そして史上初めて人工的に作られた硬質樹脂だったのです。ただ、現在では合成樹脂の進歩と多様化によってほとんど忘れられた存在となってしまっています。
エボナイトという言葉を高価な万年筆の軸の材料として耳にしたことがある方は多いと思います。
このエボナイトはハードラバーと同じもので、パイプの吸い口やサックス等の楽器のマウスピースにも独特な感触や音色を出す素材として使われています。

さて、本題のフライリールに話を戻しましょう。
現在製造されている両軸型リールでサイドプレートが黒いもののほとんどは、アルミ系の金属に表面処理を施して黒くしているものです。代表的なものとしてボグダンやピアレスがあります。
樹脂を使ったものでも、その大半は最新の合成樹脂、ジュラコンやMCナイロンです。
伝統的な、というより過去の遺物とさえいえそうなハードラバーを使ったリールはほとんどありません。
現在、2004年時点において国内でハードラバーを生産しているのはわずかに一社、トータルの生産量も樹脂全体から見れば統計に入らないぐらいの微々たるものです。


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