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2シーズン目を迎えて、「されど糸巻き」考 [メーカーが語る"Alchemy Reel"の秘密]


The Alchemy Reels

これらは僕が実際に使っているアルケミーリール・プロトタイプの4台です。
プロトとは言っても、最終試作なので刻印等細部に僅かな違いがあるだけでプロダクションモデルと同じです。

使い始めてから今年で2シーズン目になるのですが、釣りをする過程で増え続ける傷が味わいを深めてはいるものの、機能的な問題は出ていません。
ピカピカに仕上げたハードラバー面ですが、少し艶がなくなり細かな傷は付くものの、時の流れを感じさせる貫禄が出てくるように、良い感じで古びていっています。

ひとつ気になる部分は、長期間に渡ってより滑らかな回転を得るために、クリアランスを最小限にしている関係で、ハンドルにハードラバー、軸受けにメタルブッシュを使用した Model 44 & Model 50 は初期に慣らし期間とでもいえる渋さが感じられることがあります。
特に気温が氷点下近くまで下がる時にこの症状が出るようです。
おそらく、素材の熱膨張率の違いからこのような現象が起こると考えています。
対症法としては、エンジンの慣らし運転のように、ひたすらクルクル回して接触面を滑らかにしていくことしかないのですが、回転部にオイルを注油することによりこの現象をある程度緩和することができます。
もし、このような症状が出た場合は上記の方法をお試しください。

自分で書くのも変ですが、みんなレイズドピラーですよね。
この形は同じキャパシティのスプールを持つ場合、タイコ型リールより外径が小さくなる
(ピラー部の出っ張りは別ですよ、っていうかタイコ型の場合、外径はピラー部の出っ張りの先端を繋いだ外周になってしまうわけです)
ので、コンパクトに仕上がるんですね。


このように、グリップのコンパクトなフリースに DT5F + α が巻ける Model 50 を付けても違和感ないでしょ? 
この竿は Katana 704 なので、僕はバッキングをいっぱい巻いた上に WF4F です。

写真を撮ると魚が小さく見える(笑)のですが、個人的にはこの50サイズが好みですね。ちょっとした径の違いですが、魚が突っ走ってリールを使った時の対応がかなり楽になります。
と言っても、かわいいリール派の前では無力ですが・・・

さて、素敵なお客様にも恵まれてリール屋さんを開業して2シーズン目。
イベントにも顔を出させていただき、つぶさに色々な方の反応を観察してきました。

うちのリール、ハッキリ言って高価です。
まして渓流での使用がメインの「たかが糸巻き」にその値段を払おうとする人は、非常に少数なんですね。
グラファイトロッドも高価になった今、平均的なコスト比を次の式、

竿の価格 : リールの価格 = X : 1

に表すと、Xはどれぐらいになるんでしょう?
Xの値は、2~3、下手したら5以上かもしれませんね(笑)

でも、ちょっと考えてみてください。
フライフィッシングにおいてリールってそんなに価値の低いものなんでしょうか?
フライリールが存在して初めて、毛針を使った釣りはフライフィッシングになったのではないでしょうか?
もし、フライリールが無かりせば、僕はこの釣りをしていないはずです。
だって、遠近緩急、自由自在にのばせるフライラインを操ることこそが、この釣り最高の魅力なんですから。
フライリールは竿のお尻に付いた重りではないのです。

「たかが糸巻き」、「されど糸巻き」です。
うちのリールを買ってくれとは言いません、
でも、もっとリールにも愛を注いでやってください。
愛するに値するリールは、よく探せば市場にいくらでもあるのですから。

釣りに行けないとき、部屋の中でさまざまな思い出を傷と共に刻み込んだリールをクルクルするのは素敵な時間です。
ワインやモルト、シガーやパイプが、ひとりで過ごす時を素晴らしく余韻のある時間に変えるように。

道具には、それを使う人の時間が刻み込まれていきます。
時は還ることなく、同じ経験は二度と出来ません。

10年後、いや20年後、ケースから取り出してハンドルを回す時、さまざまな思い出や経験を自分の心に蘇らせてくれるリール。
それだけの質感と味わいのあるリールを、ぜひ使っていただきたいのです。
フライリールは、単なる実用品ではないのですから。


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