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アメリカン・バンブーロッドのいままで [本棚から]

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"Casting a Spell" by George Black、の翻訳本です。

"Casting a Spell"
タイトルを直訳すると意味がちょっとわかりにくい・・・、

なので、こんなお題もありなのかとも思いますが、
「アメリカン・バンブーロッドのいままで」という邦題からは、原題の「魔法に掛かる」っていう語呂合わせ的な意味に含まれた精神的なモノが無くなって、なんだかお買い物や歴史ガイドみたいに即物的な感じを受けてしまいます。

まあ、そのへんは内容には係わらないコトなのでいいのかもしれませんが・・・

でも、やっぱりヘンだな。

アマゾンから買った原書を読み切れずに投げ出した僕が言うのもどうかとは思うのですが、この"Casting a Spell"という本はバンブーロッドの歴史書でもお買い物ガイドブックでもない、バンブーロッドの持つ熱病のような魔法に掛かってしまった男の独り言みたいなものなのですから。

この「アメリカン・バンブーロッドのいままで」という本は、"Casting a Spell"の翻訳版だと知ったときにすぐ出版元へ予約して購入したものです。
タイトルからは、そのことにまったく気がつきませんでした。

なんだか、かったるいタイトルの竹竿について書かれている本が出たんだなあ・・・、っていうぐらいで、「アメリカン・バンブーロッドのいままで」という本が、興味があって買ってはみたものの、前段のアメリカ東部のバンブーロッドとフライフィッシングの歴史について長々と書かれている部分の冗長さに途中で挫折した"Casting a Spell"の翻訳本だということは、出版元のウェブサイトの広告記事を見るまではまったくわからなかったわけです。

「アメリカン・バンブーロッドのいままで」を読んで、この本の中でいちばん心に残ったのは、レナードを核としたバンブーロッドビルダーの歴史ではなく、湿度の高いうっそうたるメインの森と川のイメージ、そしてビジネスとしてのフライフィッシングについて書かれている部分でした。
フライフィッシングは、まさにアメリカン・ビジネスとして企画され、意図的に成長させられていったモノだったんですね。

グレン・ブラケットが怒って出て行ったWinston社のあり方にこそ、その伝統的なアメリカン・フライフィッシング・ビジネスの姿がはっきりと見えてきます。
そして職人としてのビルダーと企業との間にある葛藤こそが現在のバンブーロッド・シーンを生み出したともいえるわけです。

いま50代を迎えようとする僕たちは、30年以上前の1970年代、カリフォルニアを中心とする西海岸の反アメリカ帝国主義的な価値観を求める若者達のムーブメントのなかに、サーフィンとバックパッキングを中心とした新しいカタチのアウトドアライフ・ブームが巻き起こり、それがまたたく間にこの国へ情報として流れ込んできたことを覚えています。

僕たちのフライフィッシングは、まさにその中にあったのです。
思想としてのブームではなく、スタイルとしてのブームの中に。

そのアウトドアムーブメントの伝道者が、僕たちよりひとつ前の世代の、芦沢さんでした。
ただ、彼の持っていた思想は、当時急成長を遂げるさなかであった商業雑誌を中心とした物を売るための宣伝戦略に飲み込まれて伝わらず、ただファッションやスタイルとしてのみこの国の若者に受け入れられていきました。
ノースフェイスやシェラデザインのデイパックをかついで、手にはフェンウイックのグラスロッド、というのがファッションでありスタイルだったのです。

話が脱線してしまいましたね、本題へ戻します。

その西海岸的なフライフィッシングは東部の伝統的フライフィッシングとはとは大きく異なっていることはアメリカへ行くようになってから薄々感じていましたが、それがこの本によってはっきり裏付けられたような気がします。
歴史が浅く伝統がないアメリカゆえに、ムリヤリに伝統として祭り上げられた東部のスノビッシュなフライフィッシングと、本質的にラジカルな動きの中に自然発生的に生まれてきた当時の西海岸スタイルのフライフィッシングは、似て非なるモノだったのです。

ところで、この国においてフライフィッシングはどういう道をたどってきたのでしょうか?
それは次の機会にでも、

「アメリカン・バンブーロッドのいままで」

バンブーロッドに興味がある人も、ない人も、
フライフィッシングに係わる人は、
できればバンブーロッドのカタログとしてではなく、この本を一読されることをお勧めします。

「これからの」フライフィッシングと、
「これからの」フライロッドについて、

きっと、いろいろ考えさせられることがあると思います。


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