BILLY PATE TARPON AR ビリーペイト・ターポン・アンチリバース(海フライリールの私的考察、その7) [フライリール "Fly Reel"]
BILLY PATE TARPON AR ビリーペイト・ターポン・アンチリバース、旧タイプの穴なしモデルです。
ハンドルやドラグ調整用のダイヤルにまで穴が開けられて、やたらと穴だらけになった現行のビリーペイトリールはどうもにも頂けないのですが、この旧型の穴なしスプールモデルはソルト用リールのネオクラシックともいえる魅力的なデザインのリールです。
欲を言えば最初期型のパーミングリムがないインスプール仕様で、ボディがもっとキンキラキンで派手なゴールド・アノダイズド仕上げだった頃のビリーペイト・リールが見た目には最高なんですが・・・。
この現行型(ティボーと同じ形になってます)とは異なった、ロープロファイル?なフットもいい感じです。
フックを引っ掛ける穴は無いですけど・・・
このリールのディディールを見ていると、ビリーペイト・リールが非常に進んだコンセプトの元に作られていたことがわかります。
それを最もよく表しているのが、アンチリバースハンドルの部分です。
ハンドルバーの両サイドをスプールリムより内(奥)側に入れ込むことにより、ハンドルシャフトへのラインの噛み込みが起こりにくいように設計されています。
これは当時のフィンノア・アンチリバース・リールなどで発生しがちだったたトラブル、スプールから浮いたアンチリバースハンドルの下へラインが絡み込む、という問題を解消するためのすばらしいアイディアだったのです。
このビリーペイト・リールのハンドルに採用されたアイディアは、エーベルのアンチリバース・リールやシーマスターのデュアルモード・リールなどにも継承されています。
ビリーペイト・ターポン、アンチリバースとダイレクトドライブ。
どうです、旧型の穴なしアンチリバース、すごくカッコいいと思いませんか?
現在ではダイレクトドライブがソルトウォーターリールの主流になっていますが、ビリーペイトリールが開発された当時は、ソルト用の高性能リール=アンチリバースという考え方が主流だったようで、当時に撮影された映像のなかでビリーペイト自身がソルトウォーター用のタックルとしてアンチリバース・リールを勧めていた場面を見たような記憶があります。
歴史的な真実がどうなのかはわかりませんが、いま手元にある2台のビリーペイト・リールを見比べると、このリールはやはりアンチリバース・システムを前提として開発されたものだと考えざるを得ません。
このリールに限り、ダイレクトドライブはユーザーのニーズによってアンチリバースを元に作られたものだと思います。
ビリーペイト・アンチリバース・モデルが現場での経験を元にして非常によく考えて作られているのに対して、ダイレクトドライブ・モデルは、回転する小径なスプールのセンターにドラグ調節用のノブがあるなど、あまりにもいろんな部分が練り込まれていないように感じます。
口さがなく言えば、ダイレクトドライブはアンチリバースのフレームをそのまま流用してお手軽に作られたリールでかなり中途半端、そして、どこかでっち上げたような印象さえ受けてしまいます。
まあ、これが穴だらけになった現行モデルとの比較だと、ダイレクトドライブ・モデルもここまで分が悪くなるとは思わないのですが・・・
軽量で高性能な大口径最新型ソルト用フライリールが選択に困るほど市場にあふれている今日の状況のなかで、いまさらビリーペイト・リールに機能を求めるのもどうかとは思いますが・・・、
フライの道具って必ずしも機能だけが優れていればいい、ってわけでもないですからね。
ただ、一期一会ともいえるようなとんでもない魚が掛かる可能性があるのが海の釣りで、その辺りが難しいところです。
ちなみに、キッチンスケールに乗せて重さを量ったところ、
ダイレクトドライブ・モデルが420g
アンチリバース・モデルが466g
と、かなりの差がつきました。
どちらもバッキングとフライラインを巻いたままの状態ですので、多少の相違はあると思いますが、アンチリバースは余分な部品が付いているだけあって、やはり重いですね。