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竹フェルール、三態、『フリース』『羽舟』『トレメンドス』 [バンブーロッド "Bamboo Rod"]

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竹製のフェルールを使った3本。右上から、「Bjarne Fries」、「中村羽舟」、「トレメンドス」。

ジョイント部にそれぞれに特徴のある「竹フェルール」が使われている「竹製フライロッド」が3本並んでいます。

「バンブーフェルール」に「バンブーロッド」って書かないのは、羽舟さんの竿がバンブーではなくマダケから作られているからですね。

モデルはそれぞれ、

Bjarne Fries "Noodle" 8' 2P #2~3
中村羽舟 「魅了」 7'7" 2P #4
Tremendous "The Cane" 7' 2P #4

で、竹フェルールが付いているという以外はスペックに共通性はありません。

フェルール部をもうちょっと詳しく見ていくと、こうなります。

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竹フェルールといっても、すべて違う構造とデザインになっているのがわかりますか?


まずは右端、フリースさんのFIBHフェルールです。

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FIBHフェルール

フェルールのオス側は、バット部分のブランク先端をそのまま利用していますね。

それに対するメス側は、ティップ部分のブランク後端を直接スウェル状に加工して径を大きくし、内部をオスフェルールがちょうど差し込める大きさでブランク内部を中空構造にするように削り取ってあります。
このFIBHフェルールは、フリースさんが竹フェルールを開発したごく初期のもので、オス側はバーニッシュ仕上げではなく、なんらかの樹脂の含浸加工になっています。
その後、フェルールのオスフェルール表面にもバーニッシュされたものに変わっています。
大きさも少しゴツさがとれたような気もしますが、同モデルを比べたことがないので正確なことはわかりません。

僕は、この初期型の含浸加工されたフェルールの方が抜くときに固着しないので好きなのですが(バーニッシュされたものはかなりガッチリ食い込んで抜きにくく、そのためにフェルールを抜くための道具が付属しているぐらいですから・・・)、フリースさんがこの部分の仕様を変更したことにはなにか理由があるはずです。
おそらく、この部分からブランク内に水分が浸透する可能性があることを嫌ったからだと思うのですが・・・


次は羽舟さんの竹フェルールです。
 

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羽舟式竹フェルール

メス側のフェルールがブランクとは別に作られているのがわかりますか。
ブランクの先端に、別体として加工されたメスフェルール部分を取り付けてあります。
このメスフェルールは外形は6角ですが内部は円形にくり抜かれていて、そこにバット側の丸く加工されたオスフェルールが差し込まれる構造になっています。

メスフェルールは極限まで薄く作られており、内部の円周と外面の6角形の辺が接する部分は皮一枚を残すぐらいにまで削ぎ落とされ、強度を持たせるために金輪で補強されています。

FIBHフェルールは、竿が曲がったときにフェルール部分も曲がるのか?と尋ねられると、
じっさいどうなんだろ?っていうぐらいにしかしならないのですが、
羽舟さんの竹フェルールは竿が曲がったときにはフェルール部も明らかに竿と一体になって曲がっているのがわかります。

羽舟さんのフェルールは、写真からも、挿入部分にハッキリとしたテーパーが付けられていることがわかります。


最後は、「トレメンドス」の竹フェルールです。

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「トレメンドス」の竹フェルール

構成はFIBHフェルールと同じで、メスフェルールはティップ側ブランクの後端をスゥエルさせ、その内部を空洞になるように中空加工して、そこにバット側ブランク先端のオスフェルールが挿入されるようになっています。

オス側挿入部は、バット側のブランク先端がそのまま円形に加工されています。
テーパーは弱めですね。
メス側の挿入部も同径の円形に加工されています。
メスフェルールの肉厚は、見たところではFIBHフェルールとほぼ同じぐらいです。
また、メスフェルールの外側もスゥエルの途中から徐々に円形にされていき、フェルール部は外形も真円になっています。
このあたりの仕上げは、トレメンドス、市川さんの美意識でしょうか?

ロッドを曲げると、フェルールもわずかに曲がります。
フェルール部分の堅さは、FIBHフェルールと、羽舟式フェルールの中間って感じです。

ラインを乗せて振った感じですが、どの竿も極めてスムースで、抜けがいいという特徴があります。
スラックの入らないラインがスッと出る、っていう感じですね。
また、ラインを操っているという負荷を常に手で感じることの出来る竿だとも言えます。

ただ、これらの特徴はよくできた竿ならば金属フェルールの物でも感じられるので、
「コレ」こそが竹フェルールの特徴だ!と端的に指摘することは難しいですね。

とにかく、この3本ともが振って気持ちのいい優れたフライロッドであることだけは確かです。


2009年3月23日 追記

竹竿に竹フェルール(バンブーロッドにバンブーフェルールでもいいのですが・・・)を使用する目的は二つあると思います。

一つはフライロッドとしての機能面から、
もう一つは心情的で美的な観点からです。

心情的でかつ美的な観点とは、
竹竿なんだから金属や人工的な素材ではなく、同じ自然から得られる竹素材で作ったフェルールを使いたいと思う心や、竹竿には竹フェルールの方が美しいと考える想いのことですね。
フライロッドは漁具ではなく趣味のための道具なのですから、こういった考え方はある意味当然だと思います。

機能面から竹フェルールを考えると、
まず前提として「フライロッドにフェルールは邪魔物」である。
「竿にジョイント部は無い方がいい」というスタンスに立つ必要があります。

ただし、そこには技術的に可能であるならば、という仮定と、
持ち運びをどうするかを全く無視する、という条件が付きますけどね。

バンブーロッドビルダーの中には、

「竿の途中に重いフェルールがあるから竿の調子が出るのだ」

と主張される方もおられるようですが、この考え方は、いまだに既存の旧来からあるロッドテーパーをベースに竿を作られているからだと思います。
これらの「歴史的な名竿」といわれるフライロッドのテーパーは、フェルールを作るための技術的な問題や、接着剤の強度が弱かったという理由から、ジョイント部に大きくて重たいフェルールを使わざるを得なかった当時のビルダーが、「フェルールは大きくて重たい物である」という制約された条件の中で最高のロッドアクションを求める過程で開発されてきた物のはずです。

これら歴史的要件を考えることなく、平然と上記の主張をされるロッドビルダーを、
僕は「ロッドビルダー界のネオコン(新保守派)」と呼ぶことにしています(笑)

すくなくとも僕が知る限り、素晴らしいアクションを持ったフライロッドを作られている現在の竹竿ビルダーは、2本継ぎ以上の竿にはどうしても存在するジョイント部分に使わざるを得ない、フェルールの重さと硬さをよりよい竿を開発していく上でのデメリットとして極力排除しようと努力しています。
その方法や手段は、それぞれのビルダーによってさまざまに異なった個性的なアプローチとなり、またそれぞれに魅力的な外観を持つ物にもなっています。

その一連の努力や技術開発の中で製品化されてきたもののひとつが、竹フェルールです。

なぜフェルールが「より軽く」て「より柔軟性がある」方が優れているのかは、フリースさんのウェブサイトや、新しい取り組みに積極的な竹竿ビルダー諸氏に直接聞いていただいた方がいいとは思いますが、僕がちょっとひとことだけ解説するとすれば、

「付け加えた物」を動かすには、「その分だけ大きなエネルギー」が必要で、そのためにはそのエネルギーを発生させる「余分な構造」が必要になって、それを動かすためには「余計な力」が・・・、
ってことですね。

わかりますか? 
これで解説になってんですかね~(笑)


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