バンブーロッド雑感、ひさしぶりにいろんな竿を振り比べて・・・ [バンブーロッド "Bamboo Rod"]
「風見鶏」ならぬ「風見魚」、しかし頭はドラゴン・・・
秋の休日、釣りには行かず、友人が持ってきた何本もの竹竿と僕が所有するフライロッドを片っ端から振り比べていました。
振り比べた竹竿の写真を片っ端から出したかったのですが、
いくらブログといっても現役のビルダーが作っている竹竿に対する本質的な疑問、
もしくは否定的見解をもあげつらいそうなので、
さすがに自己規制ということで、
秋空を泳ぐ「風見魚」なぞの写真をちょっと・・・
ここからは、僕が好きな竹竿についての話です。
"Paul Young" !?
"Made in Hokkaido"
この2本は北海道、函館近郊在住の朝間さんの手になる竹竿。
どちらも強めのフレーミングを施された7’6”。いわゆる「ヤング系統」のパラボリック・アクション。
向こう側に置かれている竿は、"Asama Rod T764bf 7'6" #4" 『パーペキショニスト』
手前のが、"Asama Rodworks 7 1/2' DT4/WF5" です。
レタリングの入れ方が違うのは、朝間さんの気分次第ってところなのでしょうか(笑)
この2本のロッド、原型は「パーフェクショニスト」のようですが、実はまったく違う竿なんですね。
フェルールがバンブーフェルールかニッケルシルバーかという相違点もあるのですが、それ以上に振ったときの感覚が大きく違います。
朝間さんの7'6"=ほぼ『パーペキショニスト』だって思っていた僕は、
"Asama Rodworks 7 1/2' DT4/WF5" をはじめて振ったとき、
「え~、なにこの竿・・・」
って思ってしまいました。
4番ラインだと、僕が「朝間さんの竿」の特徴のように思っていた、スッとした力の抜け、竿と竿の振り方を意識しなくとも自然にストレートなラインがターゲットへ向かってするする~と伸びていく感じ、がないんですね。
ミッドが強ばっているというのでしょうか、
なんだか間にモノが挟まっているというか、ちょっと違和感があるんです。
近距離でティップを使うか、負荷を大きく掛けて竿をグッと曲げてやらないとラインが生きない。
「ね、パーペキショニスト比べるとなんかよくないでしょ、この竿。
ショップの話では、使っているうちに腰が抜けていい感じになりますよ、ってことなんだけど・・・」
「う~ん、たしかに、朝間さんの竿にしてはなんかさえないね~」
5番ラインがあるからこれで振ってみようよ、
ってな感じで、WF5Fに変えると。
「4番より乗りがいいよね、ごっつい飛ぶし・・・」
「でも、手に負担が掛かる竿ですね~、ムリヤリ曲げてやらないとあかんでしょ」
「もういちどパーペキショニスト振らしてください」
「やっぱり、パーペキショニストの方が断然いいですよね。どう思います?」
「そうやよね~」
「でも、実際に釣りをしてみたらどうなんやろ・・・」
朝間派(笑)の僕としても、
この竿ってなんなんやろ、朝間さんの竿のしてはちょっと妙だよな~
って、なんだか釈然としないままその日のフリフリ会は終わったのですが・・・。
朝間さんの性格として、制作者本人が納得できないレベルの竿を商品として売るはずはないんですよね。
ということは、この竿のアクションには必然性があるはずです。
朝間さんがなにを考えてこの竿を作ったのか、という理由がね。
おおよその推測はついたのですが、やっぱり本人に聞くのがいちばんですからね。
さっそく朝間さんに問い合わせてみました。
朝間さんからの返事は次のようなものでした。
『あれは実質5番ロッド、札内水系で50UPを獲るための竿ですから、
道南ではほぼ使う機会がありません。
そちらでは湖水の釣り以外に用途がないでしょう。
4番ラインで15フィート以上のリーダーにミッジサイズを結んで、
10数ヤードのラインをフォールスキャストなし一発で打ち返すのに都合がいいんだそうで、
狙う魚がデカくてパワフルなのであの位の腰が必要、
かつ細ティペットがやられない程度の柔らかさ、
そこいらのバランスが上手くいってるとの話なんです。
佐藤Sさんは「この竿、60UPの走りを止められますよ」って言ってました。
ここ北海道でも十勝仕様は別格でして、
汎用を考えると仮称「パーペキショニスト」あたりかなと思います。』
う~ん、この竿は道南でも使う機会がない『十勝・札内スペシャル』なのか・・・(--;)
ということで、謎が解けました。
ご存じない方にちょっと説明すると、
札内水系は国内最強ともいえる大型でパワフルなニジマスの生息地です。
特に10月半ば、秋のこのシーズン、小型メイフライのマッチザハッチでこの暴力的なニジマスを狙う釣りができます。
この竿は、まさに、その釣りのために性能を特化した竿だった、というわけです。
その竿をどうして関西在住の友人が手にしたかというのは、ちょっと不思議ですが・・・
彼に聞いてみると、僕の「パーペキショニスト」をメタルフェルールにディチューンしたスタンダードバージョン程度の気持ちだったようです。
そりゃ、ハズしますわ・・・(--;)
理由はどうあれ、求めていた竿とはぜんぜん違うモノを手にしてしまったのですから。
スペックだけ見れば同じような竿に思えてもに、ほんとうはまったく違う竿だったってことです。
竹竿を買うときの、おもしろさと怖さがココにあるんです。
才能あるビルダーさんの竿ほど、創り出される竿には釣りの現場での知識と経験がフィードバックされています。
釣り場と釣り方、対象魚を入力すると、こんな竿が必要だっていうイメージが出力される、
そしてそれをカタチにできる技術があるからです。
ビルダーさんへの要望が当をえてないものであったり、
今回のように同じようなスペックだからといって、同じようなモノであると誤解したりすれば、
あれ・・・??
っという竿を手にする結果になってしまいます。
それに、フライロッドというモノはフライラインを通して振ってみて、
極論すればフィールドで釣りをしてみて、
はじめてその竿の特徴や善し悪しやわかるものです。
ショップの店内でフライロッドを繋いで素振りをしても、その場では店員もお客も誰もがわかったような振りをしてはいますが、本当のところはみんなよくわからないままなんだと思います。
だからこそ、新しい竿を買うコトは楽しいんですけど、
なんといっても高価な買い物ですからね。
買う側は竿を買う前に、手間を惜しまず、できるだけのことをしたほうがいいし、
そのためにはどこかで同じ竿を振ってみることや、デモロッドを借りて使ってみることが大切だと思います。
そして、そうすることが可能なビルダーさんやお店を探す必要もあるわけです。
その過程も、楽しみのうちですし、
たとえ失敗したとしても、それがいい経験になると思って精進していくのが、
おとなの趣味というもの、なのじゃないでしょうか?
特に、マスプロダクトではないモノを買うこと、
オーダーや誂えって、そういうコトだと思います。
製品は作らせる側と作る側とのコラボレーションによって完成されるモノなのですから、
よいモノを得るためには、作り手だけではなく発注する側の能力をも試されることになるわけです。
ヘンなオーダーをしてしまって妙なモノを手にしてしまった経験は、誰にでもあると思います。
もちろん、僕にもいっぱいあります・・・
"Asama Rod T764bf 7'6" #4" 『パーペキショニスト』
またグリップを整形しました。
今回は、グリップ先端部分のシェイプアップ。
魚雷型から砲弾型へ、って感じです。
どんどん御本家筋に似てくるようですが・・・(--;)