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冬の夜長に、中空竿とレプリカロッド、そしてフライフィッシングについて考える・・・その1 [バンブーロッド "Bamboo Rod"]

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"Mt.Shasta" の夜明け

 

よく考えると、いま使われている釣り竿でソリッドなもの、つまり中まで竿を構成する素材がぎっしり詰まっているものって、多少の例外はあるとしてもバンブーロッドだけですよね。

グラファイトロッドは、ほぼすべて中空のチューブラー構造ですし、この国で独自に進化してきた竹竿である和竿は丸竹をそのまま使うのでもちろん中空。
チューブラー構造になっていないソリッドブランクやムクの素材は、素材の種類を問わず一部の竿の穂先や先端部に使われているぐらいです。

釣り竿以外のものでも、ゴルフのシャフトから物干し竿まで、人間が作り出した細くて長いものは、いまや中が抜けてて当たり前、って感じです。
だって、中までギッシリと詰まっているより軽いもんね(笑)
人間が手に持って使う道具で軽いと役に立たないモノって、ハンマーや斧といった重さが機能上どうしても必要な道具だけだと思います。

それじゃ、釣り竿は?
「釣り竿も、もちろん軽い方がいい!!」(・・・って断言してしまおう)

 

現在のフライフィッシングのシステムは、ラインもリーダーも、もっと言えばフライフィッシングという釣り方さえもが、釣り竿の素材がバンブーだった、もしくは、バンブーロッドしかなかった、というところから発達してきたといっても間違いではないと思います。
正三角形のバンブーストリップを6本束ねた構造になっているバンブーロッドという「独特の重さと反発力をもった釣り竿」を使うことから、いま存在しているフライラインやリーダー、そしてフライを使うフライフィッシングというモノがトータルとして完成してきた。
つまり、バンブーロッドという釣り竿があったからこそ、いま「フライフィッシング」と呼ばれている釣りが生まれた、ということですね。
(この国における毛針釣りが「テンカラ釣り」としてできあがってきたのは、その前提として、軽量で長い丸竹で作られた「和竿」という釣り竿があったからだ、という考え方と同じです。)

あらゆるモノゴトにおいて、道具と方法は不可分なものとして進化していくわけです。

フライフィッシングにおける進化の歴史過程を振り返ると、バンブーロッドがフライフィッシングというトータルとしてのシステムにぴったりハマるのはあたりまえ、当然のことなんです。
フライラインという独特のラインも、バンブーロッドで使うコトを前提にいまあるような重さを持ったラインとして開発されてきたのですから。


これは極論ですが、異なった特性(軽くて反発力が強い)を持った釣り竿(グラファイトロッド)がフライロッドとしてフライフィッシングに使われるようになった現在、フライフィッシングがバンブーロッドしかなかった時代と同じシステムのまま行われているってコトの方がおかしいわけです。
好き嫌いは別として、軽量ラインを使うロングロッド(とその竿を使う釣り方)を開発した杉坂研二さん的な発想も、「フライフィッシングとしてではなく、毛針という疑似餌を使った魚釣り」という次元で考えると、正しい進化のひとつの形だと思います。

言葉を換えると、その釣りはもう「(バンブーロッド時代の)フライフィッシング」ではない、
とも言えるのですが・・・


なんだか前置きが脱線してしまいましたが、 
本題の中空ロッド、つまり「ホロー構造のバンブーフライロッド(バンブー以外の竹で作られている竿も含みます)」に話題を戻します。

中空構造のバンブーロッド(もしくは竹竿)が初めて作られたのは、第二次世界大戦前のアメリカ西海岸。"E. C. Powell"の手によってです。
その目的は、人類不変のテーマ『道具は軽い方がいい』(笑)にのっとり、ロッドブランクの自重を軽くするためでした。

おまけに、この中空構造、中身が詰まったソリッドよりも反発力が大きくなる、という思わぬ副産物まで生み出してしまったのです。
中空構造のバンブーロッドは「軽く」、そして「反発力が大きい」、という釣り竿としてのメリットをいちどに二つも得たことになります。

だとしたら、中空バンブーロッドがバンブーロッドの世界を席巻してもおかしくないはずですよね。
でも、そうはならなかった。
"Powell"家以外で中空構造のバンブーロッドを生産したのは、メーカーとしては"Winston"、個人ビルダーとしては"G. Hoewlls"だけでした(最近の状況はまた違ってきましたが・・・)。
いったいどうしてだったのでしょう?
もちろん特許の問題があったとは思います。でも、本当に革命的な発明ならば時間は掛かっても主流になっていてもおかしくないはずです。
ということは、革命的発明とまではならなかったということですよね。

そこにはグラス繊維強化プラスチックに始まる新素材の登場が影響しています。
真に革命的だとも言えるグラスロッドとグラファイトロッドの登場によって、バンブーロッドはその進化を止めてしまったのです。
バンブーロッドはあっという間に釣り竿のメインストリームから外れてしまい、一部の好事家のモノとなってしまいました。
もし、その時グラスロッドが登場してこなかったら、
バンブーロッドをめぐる状況はまた変わっていたのだ、と。

バンブーロッドが再び進化を始めたのは、「バンブーロッド・ルネッサンス」とも呼ばれるこの10年ほどの期間ではないでしょうか。
そのあたらしい流れの中で、中空構造のバンブーロッドが数十年の眠りから覚めて再び脚光を浴びてきたようです。


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