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冬の夜長に、中空竿とレプリカロッド、そしてフライフィッシングについて考える・・・その2 [バンブーロッド "Bamboo Rod"]

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"Upper Sacramento River"をハイスティック・ニンフィングで釣る"Wayne Eng" 

 

いま僕の手元にある中空構造(ホロービルド)のバンブーロッドは、米国のロッドメーカー"Gary Howells"と"Jim Hidy"が作った竿が数本ずつと、カムパネラの宇田さんが作った6'7"#3 3Pだけですが、近々新しいホロービルドの『クラモチロッド』と、北海道のロッドメーカー、朝間さんが作った『壁面厚1㎜という驚異的なロッド』が届くはずです。

このホロービルドの『クラモチロッド』と『朝間ロッド』は、
『ビギナーズ・マム』さんで12月20日(日)に開催されるプチイベントで、
その実物をご覧いただけることになりました。
もちろん試投もして頂けます。
興味を持たれた方はぜひご来場ください。

余談ですが・・・、
竹竿を製作している人のことを英語では個人でも"Bamboo Rod Maker"という場合が多いのですが、この国では『バンブーロッドビルダー』って言い方をしますよね、いったいなぜなんでしょう?
バンブーロッドの製作を仕事としている人のことを『メーカー』と呼ぶのだろうか・・・(--?)
ということは、『ビルダー』って、ただ作っている人っていう意味なの(? ?)

これまでに所有して使ったことがあるメーカーのホロービルドロッドは、上記以外にも、中空ロッドの歴史的オリジナルである"E.C.Powell"と"Winston"にはじまり、現役ロッドメーカーの"Mario Wojnicki"から"Per Brandin"まで、思い出してみればけっこうたくさんありました。
よく考えると、米国製の竿に関しては伝統的なソリッドビルドの物よりたくさん持っていたような気もします。
あまり意識したことはなかったのですが、僕は中空ロッド愛好家だったのかもしれません。
ただ、ソリッドロッドでも、当時から著名だった"Leonerd"や"Payne"よりも、
"Paul Young"や"Dickerson""Summers"のロッドを多く所有していたので、単なるヘソ曲がりかも・・・。

米国メイドの中空ロッドだけを使っていたときにはまったく気にしたことがなかったのですが、※国産のホロービルドの竿を使っていて、「あれっ・・・??」って思うことがありました。

※注 ここに名前をあげたメーカーの竿じゃないですよ(笑)

 

それは、
「中空構造の竿って、パワーがない(ソリッドロッドよりパワーが弱い)んじゃないの?」
という疑問です。

また、
「同じテーパーで作ったロッドを中空にすると反発力が上がる」
という話を巷のバンブーロッド関係者(笑)のあいだで頻繁に耳にしますし、僕もまたそのように考えていたのですが、
もしかするとその考え方は間違っているんじゃないか?

そして、前のブログ、・・・その1で、僕は、
『中空構造のバンブーロッドは「軽く」、そして「反発力が大きい」、という釣り竿としてのメリットをいちどに二つも得たことになります。』
と書いたのですが、これは本当に正しいんだろうか?
という疑問でもあります。

芝生の上で竿にラインを入れて振っているだけではまったくといっていいぐらい気がつかないのですが、実際の釣り場で、ある特定の状況のときに、その疑問が唐突に心の中に違和感として浮かびあがってくることがありました。

その特定の状況とは、長めのラインを水面からピックアップしようとするとき、
そして強く引く魚を掛けて、さあ寄せようと竿を立てたときです。

これら二つのシチュエーションに限って、
「あれ、この竿って思ったより弱いかも・・・?」
って感じることがあります。

そのときは、まあこんなもんかなあ・・・、という程度で、疑問のままほってあったのですが、
あるとき倉持さんと話していたコトが切っ掛けになって、以前から抱いていたこの謎が解けました。

言葉の使い方が正しいかどうか、ちょっと自信がないのですが、
「ホロービルドロッドは弾力はあるけどトルクがない」
とでもいいましょうか・・・
反発するときのスピードは速いけれど、グッと曲がったところから回復しようとする力は弱い、
動的な弾力性はあるけど、静的な戻ろうとする力は弱い、ということです。

う~ん・・・、意味わかりますか?

もう少しわかりやすく、釣り場で起こりがちな現象で書くと、
フライラインを投げているときは、
「キャスティングでは意外なほどビシ~ッとロングキャストが決まる」
しかし、魚を掛けてからは、
「寄せる力が弱いみたい、小さな魚でも大きく感じてしまうんだよね。なんかへんやな~(--;)」
って思うわけです。

フライラインを投げるメカニズムと、掛けた魚を寄せるメカニズムは、曲がった竿が元に戻ろうとする力がそこに作用しているという点では同じなのですが、同じ反発力といっても種類が違います。

理科系が専門じゃないので表現方法を間違ってるかもしれませんが、
竿から感じるイメージとしては、
「キャスティングは曲がったロッドが復元するときにロッドティップが動くスピードがラインの運動に伝達されるていく」
のに対し、
「ランディングには曲がったロッドが復元しようとするトルクそのものが作用する」
わけです。

つまり、中空ロッドはソリッドロッドと比較すると、ロッドスピードが上がるのでキャスティング能力は高まるのですが、その代償としてトルクが減少するので魚を取り込む能力が低下してしまうということです。
クルマのエンジンにたとえるとわかりやすいのですが、バンブーロッドの中空化は「パワーは上がるんだけどトルクが落ちる」という二律背反の中にあるようです。

 

ところで、なぜ、ある国産の中空ロッドに限ってこの違いを感じたのか?
という理由として考えられることは、
この国の渓流用として作られた竿なので、もともと持たされていたパワー(トルク)が小さく、そのトルクの小ささが中空化によってより強調されてしまった、ということだと思います。
ソリッドロッドだとロッドのパワーを落とすと同時にキャスタビリティも低下するのですが、そのへんは中空効果による復元速度のハイスピード化で誤魔化されていたのでしょう。

米国の竿は、基本的にトラウトロッドとして設計されているので、中空化によってスポイルされても影響が無いほどの十分なパワー(トルク)が備わっているのでしょうね。

 

中空ロッドを設計製作する場合は上記のことを頭に入れておかないと、とんでもない竿が出来てしまう可能性があります。
ソリッドロッドと同じテーパーで中を抜いてパワーが上がったと喜んでいる程度のレベルでは、ロッドビルダーとしては素人の域を出ていないのじゃないかと思います。

例えば、指定番手ではまったくラインの乗りが悪く、一番手重いラインを使っても、ロングキャストはまあなんとかいけるけど・・・、やはり近距離がまったくダメという中空ロッドもありました。
この竿などは中空バンブーロッドの特性をつかみきらないままに中途半端に製作されたもので、あきらかな設計ミスだと感じました。

ソリッド構造のバンブーロッドがある程度のところまで行き着いてしまっているように感じられる、今日のバンブーロッドが置かれている状況の中で、
「バンブーロッドを中空構造にすることのメリットとデメリット」
このことを理解したメーカーの手によって創り出されるホロービルドロッドが、ノスタルジアや装飾性のなかに安住するのではない、あたらしいバンブーロッドの未来を開いていくのではないでしょうか。


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