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Bi-Metal の秘密 [フライリール "Fly Reel"]

最近製作された“Raised-Pillar Fly Reel”(レイズドピラーと発音します)のなかで、文句なしにダントツの人気を誇ったのが、
“The Leonard Mills Reel Ron Kusse Maker”
と、刻印されたフェイスを持った“Bi-Metal Reel”でした。

このリールは、ロッドメーカーであり、かつてレナード社の副社長でもあったロン・クーシーの手によって作られたと誤解されている方が多数おられました。プロショップのオーナーでさえロン・クーシー自身が作ったと思われていた方が多かったようです。

実はこのリール、Made in Japan、京都のキネヤ製なんです。

よく考えれば、個人ロッドメーカーが自分自身でリール作ることが不可能に近いことはおわかりいただけると思います。ウインストンやトーマス&トーマスといった大手フライロッドメーカー、かつてのレナードでさえリールはOEMで生産された物を自己ブランドとして販売していたにすぎないのです。

このリール、過去にレナード社が販売していた“Bi-Metal Reel”のレプリカに見えますが、実態はそんなものではありません。
クリックギアの歯数こそ、ロン・クーシーの
「キャッツキル・サウンドはバリバリいうもんや」
との意見を採り入れ、18~20枚のかなりラフで古くさいギアを使っていたのですが、それ以外の部分は、当時では考えられなかった最新の素材を使い、医療用器具を削り出す高精度なマシンによって切り出された部品を使っています。
たとえばハンドルですが、バランスウエイトのないクラッシックなアンバランス型ゆえに、ラインアウト時の回転ブレを少しでも小さくするようにプレートとシャフトには軽量高剛性なチタンが使われています。

このように機能面を押さえた上で、デザインにも細心の注意が払われていました。
サイドプレートやフレームに部分ごとにタッチを変えた手間を掛けた仕上げが施されていることにお気づきになられた方もいらっしゃると思います。
ブラスのフレームにはヘアライン加工が、ニッケルシルバーのフェイスは内周部と外周部とではミラーと梨地に仕上げが変えられ、単調になりがちな金属フェイスからメリハリのある引き締まった印象を生み出しています。
また、より完全を目指すために、ビスひとつでさえもフレームと面一になるように特殊なマイナスビスを製作しています。

ところが、
「表面全体をコンパウンドとバフで研磨して均質なピカピカにした奴がおるねんよ、どっかのプロショップのオヤジとか、なんとかかんとか・・・。まー個人の好みって言ってしまえばそれまでなんだけど、全体を鏡面仕上げするよりよっぽどか手間も時間もかかってるんやけどねえ・・・。」
と、制作者が嘆くようなことがまま発生していたらしいです。

今から考えれば笑い話ですが、“Bi-Metal Reel”にさまざまな思い入れがあった人が多くいたことの証だ、といえるのではないでしょうか。


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