TIBOR The Riptide ティボー リプタイド (海フライリールの私的考察、その3) [フライリール "Fly Reel"]
TIBOR The Riptide のフィールドストリッピング
現代のハードコア・ソルトウォーター用フライリールの標準器と言ってもいいような、TIBORリール。
その中でももっとも汎用性が高い4インチサイズのThe Riptideです。
上の写真は、スプールの交換やグリスアップをする場合に必要な、もっともシンプルに分解した、いわゆるフィールドストリッピングをした状態です。
リールは、シャフトとドラグプレート(メインギア)を含むフレーム、スプール、ドラグノブ、そしてドラグノブの脱落防止用ナットの4点に分解できます。
ただし、脱落防止用ナットを緩めるためにはマイナスドライバーかコインが必要になります。
大きさの比較のために鉛筆を入れて撮影していますが、スプールとドラグプレートの回転を支えるメインシャフトは中空で直径がかなり太い物が使われています。
また、そこに使われるベアリングはサイズが大きいので剛性が高く強度が出せます。
このリールの剛性感は、このあたりのパーツからも感じられますね(笑)
次の写真は、TIBORとBAUERのドラグプレート部分の比較です。
TIBORのメインシャフト、ドラグディスクと一体になった分厚いギア、逆回転防止用のラッチ
BAUER M4のメインシャフトにはめ込まれた、ワンウエイクラッチが内蔵されたドラグディスク
この2枚の写真を見ると、この2つのリールがかなり異なった考え方の元に作られていることがわかると思います。
何回も書きますが、
「どちらがいいリールなのか」
っていう次元でこの2台を比較するのは意味がありません。
どちらも僕が大好きな、機能的でいいリールですから。
ただ、この2台は本来の設計意図、っていうか設計者が狙っている用途が違うんですね。
ターゲット(対象魚のことですよ)がはなから違っているわけです。
もう一枚いきましょう。
手前側、フレーム裏面の厚さの違いに注目しましょう・・・(^^ゞ
こうやって比べると、同じ直径4インチのコルクディスクドラグを内蔵したフライリールといっても、この2台はけっして同じ物のように考えてはいけないってことがよくわかると思います。
フライラインとバッキングを巻いた実戦仕様で装備重量(笑)を比べると、
それぞれ275gと359gとチョットどころではない差があります。
ロッドに付けて一日中振り続けるとなると、腕や手首の疲労度にはかなりの差が付くでしょうね。
ロッドは用途や対象魚によってその選択にはけっこう気をつかうことが多いのですが、リールの場合はけっこうアバウトなことがありませんか?
僕も使いたいフライラインの仕様(番手やシンクレート)によってはラインを巻き替えるのがめんどくさいので、ついシーバスにTIBORを使ったりしますが、これってよく考えると体力の無駄遣いなんですよね。
このブログを書きながらクッキングスケールで重さを量るまでは、こんなに重さが違うとは自分でも思ってもいなかったので、TIBORを使っているとなんか疲れるなあ・・・という理由がやっと判明しましたわ・・・(--;)
フライリールは、丈夫であればいいとか、軽ければいい、といった単純な評価で判断することは出来ないんですね。
機能面でも自分の釣りのスタイルや対象魚によって最適だと考えられるリールは変わりますし、
また外観やフィーリングという趣味的要素がそこに絡んでくるのですから。
ここでスペックをチョットまとめてみます。
M4 SuperLite - 3.75” 3.75in. 5.7oz. WF8 + 150yds. 20# $365 ¥42,500
M5 SuperLite - 4” 4.00in. 6.3oz. WF9 + 225yds. 20# $390 ¥44,500
LAMSON LITESPEED 3.5 4.00in. 5.90oz. WF9 + 200yds. 20# $349 ¥48,525
TIBOR The Everglades 3.75in. 8.5oz. WF8F + 200yds. 20# $628 ¥70,350
TIBOR The Riptide 4.00in. 9.5oz. WF10F + 200yds. 30# $645 ¥72,450
BILLY PATE Bonefish 3.625in. 8.5oz. WF9F + 285yad. 20# $515 ¥57,750
BILLY PATE Tatpon 4.00in. 13oz. WF10F + 350yds. 20# $552 ¥61,740
これらは、僕が海フライで使っている8-9-10番ライン用のリールのスペックですが、
同じ4インチという直径のリールを比較したときにすぐにわかるのは、重い系のグループと軽い系のグループの2つに分かれるということです。
ラインアウト方向へ回転するスプールにブレーキを掛けるために作動させるドラグプレートの逆回転防止機構に、オリジナルの分厚い自社製のギアと逆回転防止用のラッチを組み合わせて使うのか、市販の汎用ワンウェイベアリングを使っているかの違いともいえます。
同じサイズのリールにもかかわらずかなり重さが違うのは、フレームやスプールの厚さに差があることもその理由のひとつですが、いちばん大きな重量差はこの部分、厚みのあるギアを使った逆転防止システムと市販ワンウエイベアリングを利用したシステムとの重量差による、ともいえます。
最近これらの二つのグループのいいとこ取りをしたリールも出てきました。
例えば、最近人気の出てきたThe Nautilus、など、ワンウエイベアリングを使いながらもより強度を出したタイプのリールです。
(※ドラグ機構が密閉式になっているので、分解しないと中の構造はチョット・・・、ただドラグ部分の大きさからワンウエイベアリングを使っていると推定できます。間違っていたらごめんなさい)
このNautilas、直径4インチのサイズだと、次の二つのモデルがあります。
Nautilus CCF No.10 4.00in. 9.2oz. WF10 + 250yds. 30# $450 ¥57,645
Nautilus NV No. 8/9 4.00in. 7.1oz. WF9 + 200yds. 30# $595 ¥78,600
最新型のNVはCCFと比較すると同サイズで約2oz.の軽量化がされていますが、チタンやセラミックというステンレスより軽い新素材を使って軽量化したとホームページには記載されています。
軽量化のために限界ぎりぎりまで無駄な部分を削ぎ落とした、というわけではないようですね。
リールはワンレースだけ走れればいいというF1のようなものではなく、ある程度の強度マージンと耐久性を持たせる必要があるので、無駄な部分を限界まで削ぎ落とせばいいというわけではありません。
かといって、余分な強度や耐久性を持たせることは、不必要な重量増につながるります。
そのあたりの「微妙なさじ加減」が設計制作者のそのリールに対する考え方や、技術と経験がものをいう部分なんですね。
※注 ここに記載したリールのドル価格は、2008年9月19日現在のメーカーホームページ、円価格は同日の国内代理店や小売店のホームページに記載された価格データによっています。